GCレースとは
半世紀の時空を超えて「グラチャン(GC)」が帰ってきた! 富士グランチャンピオンシリーズ(Fuji Grand Champion Series)は、1971年に始まり、1972年から2リッターの2座席スポーツカーを駆るドライバーに選手権が懸けられたレースシリーズ。黎明期の日本レース界を牽引した自動車メーカーから、プライベートチームに主導権が移るきっかけを生み出した画期的ななシリーズだった。
  その後2リッターのシングルシーター、3リッターのシングルシーターと車両を変えながら、1989年の終焉まで数々の名勝負、ドラマを生み出してきた。悲惨な事故もあったが、バラエティに富んだマシン、国内外のトップドライバーの参戦、そしてテレビ中継の影響もあって、レースと言えば「GC」と言われるほどの人気を誇った。日本のモータースポーツに新しい風を呼び込み、国産コンストラクターやボディメーカーを大きく発展させた、愛すべきカテゴリーだった。
富士グランチャンピオンシリーズは、参加するマシンとドライバーに大きな魅力があった。2リッターの2座席マシンには、外国製と国産があったが、外国製マシンも国内で独自のボディが与えられ、エンジンも外国製と国産エンジンが切磋琢磨していった。その後国内コンストラクターが独自のマシンを生み出したシングルシーターへの転換期を経て、英国製のF2やF3000シャシーにカウルを付けたマシンが主流になるが、エンジンやボディは様々で、そこが面白かった。
 一方参加ドライバーに関しては、GCに出場することがドライバーとしての成功を意味するところがあり、国内トップドライバーはほとんど参加していたし、今でいうジェントルマンドライバーも次々名乗りを挙げた。時には海外のトップドライバーが招聘されて、日本人ドライバーと真剣勝負を演じている。栄光の「グランチャンピオン」を目指して毎戦激しい戦いが繰り広げられたのである。
1989年に富士グランチャンピオン・シリーズ(最後2年は全日本戦だった)が終了してから36年。2025年8月に、往年のGCマシンによるレース「GCリターンズ」の初戦が富士スピードウェイで開催された。美しくレストアされた当時のマシン、新たに海外から輸入されたマシンが、オーナーやレジェンド・ドライバーのドライブにより、当時さながらのバトルを展開したのだ。
 当日は多くのファンや関係者が富士に集まったのだが、レジェンド・ドライバーによるデモ走行が始まると、誰もが笑顔で昔話に花を咲かせた。そして、いざレースとなれば、痺れるようなエンジンサウンドを轟かせて走るマシンの姿に誰もが興奮し、まるで青春時代に戻ったかのように目を輝かせていた。
 そう、「GCリターンズ」はサーキット全体がタイムリープするイベントなのだ。かつて憧れたレースをもう一度見てみたい。そんな夢が叶うのである!
Text: 中島 秀之